中間管理職の真っ黒な矛先

私は大学四年生で、就職活動をしていました。働きたい業界も定まっておらずフラフラとしていましたが、学校やホール会場で開催される合同企業説明会には頻繁に顔を出していました。そこで声をかけられたのが始まりでした。4月の中頃だったと記憶しています。

 

20代でも1000万近く稼ぐことができるという話にも惹かれましたが、それ以上に人事課長や係長の人柄が素晴らしいと感じました。そこからはトントン拍子で選考が進み、次の春にはその不動産会社に入社していました。

 

ここからはご想像の通りです。入社したとたんに会社は手のひらを返したようでした。入社初日、研修の名を借りた拷問が行われます。中学生の頃にいじめられた経験や、両親が交通事故で死んだ話を、大声で、しかも百人以上の前で叫ばせるのです。指導員の異様な雰囲気もあり、そこに拒否権はありませんでした。

 

泣く子は当たり前、嗚咽が入って話せなくなる子もいました。研修後、それぞれの支店に配属されますが、ここからが地獄の始まりでした。まず、その会社ではタイムカードは退勤の2時間前に打ってしまうことが習慣化していました。

 

当時、長時間労働による自殺が相次ぎ、うちの会社も危険を感じたのでしょうか。こうして毎日毎日2時間のサービス残業を余儀なくされていました。また日曜日は休日出勤が強制されるのですが、社有車を動かしたり電車で通勤すると経費がかかるので、自家用車にて出勤していました。

 

もちろん残業代などはつきません。その他にも苦しいことはたくさんありましたが、最もきつかったのは管理職の人たちのモラルのなさでした。私は元来ミスや見落としが多く、よく仕事上うまくいかないことがあり、周りに助けを求めていました。

 

同僚は私を助けてくれましたが、管理職者の目線は違いました。「お前はいつもぼうっとしているからミスするんだ」くらいなら構いません。しかし、「お前の今まで生きてきた人生がくだらないからこうなるんだ」や「お前の両親もしょうもないんだろう」といった言葉には我慢なりませんでした。

 

企業労務なんて全く無視の会社に、ピンと張った糸が切れるように、私は退職を決意しました。今は別の職種をやっていますが、いい決断だったと思っています。

 

ただ、今になって一つ思うことがあります。当時の私にとって、暴言を吐いた彼らは管理者でしたが、彼らもまた上司に管理される人間だったのだと。そう思うことで彼らのことを少し許せる気がします。