労務課の無い恐怖、経理課の呪い、そして派遣切りへまっしぐら。

私は派遣社員としてその会社に入社しました。
いわゆるベンチャー企業だったため、少数精鋭でアットホーム、社員同士は仲が良く、派遣にも裁量のある仕事を任せてもらえる環境でした。求人票に書かれた内容がウソだったという体験はよくネットでも見かけていましたが、いざ入ってみると本当に求人票どおりのアットホームな環境で働きやすく、健康的な事情や経済的な事情を考慮してくれるなど、派遣なのにこんなに優遇されていて良いのかというほど温かい職場でした。結果、3年ほど勤め、ここなら正社員として働いてみたいと思うようになりました。周りにもそれなりに頼りにされており、正社員になりなよと言われていました。今思うと口約束だけだったのですが、社員の方にそう言われていたのでルートを確約されたつもりになっていました。

 

しかし、派遣社員の落とし穴、それは労務課を頼れないというところでした。派遣先のその会社には労務課があり、人事担当が常に社員の体調や家庭事情などをウォッチしてくれていましたが、私は立場上、派遣元を通さないといけなかったので、労務関係の相談ができなかったのです。
相談できないなりになんとか自分から手立てを探して、自分の勤め先について調べているうちに、私はあることに気づいてしまいました。
最近、やたらと銀行の人がよく来社する。

 

最初は新しい事業でも始めるのかと思っていましたが、今思うとそれは融資を止められるという話をしていたようなのです。程なくして、経理課の社員が1名辞めました。事例発表も無くある日気づいたらデスクが空になっていたのです。また、もう1名の経理課の社員は15時を過ぎると退社するようになってきており、やがてその人もぱったりと来なくなってしまいました。残すところはサポートに入っていた非正規社員ばかりで、つまり事実上、経理課は無くなってしまったのです。

 

こうなってからは早いものでした。
融資を止められ、経理担当がいなくなった会社は解体が決まり、派遣契約も打ち切りを決められました。いわゆる派遣切りです。
どんなに良い環境で、派遣に優しい会社でも、資金繰りに困って会社が無くなれば、何もかも終わりです。
今は資金の安定して新しい勤め先でのんびり暮らしています。ただ、あの数年間で徐々に感づいていった労務課を頼れない環境や、経理課が潰れていく様子を思い出すとぞっとします。この先、そんな動きが出てきた会社に勤めている人は、本当に注意してください。